本当に先の見えない時代の中で、企業はなんとかして費用を軽くしたいと考えています。日本の企業では給与曲線が50代でピークを迎えるように設計されていることから、人件費削減という観点からいうと50代社員を減らすことが最も合理的であるということになりがちです。
10年以上も前から大手企業では役職定年制度を50代前半に設定している企業も数多くあるようです。それにとどまらず早期退職募集も、いつでも行われているという感覚に近くなってきました。
企業側にしてみれば、50代が仕事のパフォーマンスと年収が最もアンバランスな世代と映っていることがうかがわれます。しかし、50代はサラリーマン人生で最も充実しているはずの世代です。それも、もはや過去のことになってしまったということなのでしょうか。
そうなってしまった要因の1つは、日本企業の終身雇用という雇用形態がこれまで強く関わっていたと思います。もう1つの要因としては、社員自身が50代になるまでに自らの職業人生を何ら具体的な目標を設定せずに過ごしてきてしまったという要因もあるように思います。
1つの企業に長年勤務していれば、企業内のキャリアパスプログラムの中で十分満足できてしまうということもあると思います。その意味では、日本企業は自社社員のキャリアパス体制、教育研修体制は完備されていると思います。
あえて理想を言えば、50歳になった時点で、今どのような能力を保有していて、今後どのように会社に貢献するか、を自覚できるくらいになっていたとするならば非常に素晴らしいことだと思います。
また元々、会社員という立場は、自分の希望する能力を身につけにくい立場にあるものだと思います。常に異動があることから、自分で今の専門知識を深掘りして身につけたいと考えていても辞令が出れば新しい部署に異動せざるを得ません。
従って、誰でもが将来を見据えた自分のキャリアアップ計画や希望通りに成長していくことができにくいと思うからです。
実際の状況としては、とてもそのような先のことを考える余裕もなく、毎日働き続けることで精一杯だったというのが大方のケースではなかったのかと思います。
その年代になり、いざ会社が年齢という切り口から見てしまうと、悲しいことに貢献度と年収に乖離がある世代とみなされてしまうということになるのではないでしょうか。
そうかと言ってすぐに転職を頭に浮かべてしまうのも早計だと思います。
労働政策研究・研修機構 中高年齢者の転職・再就職調査(2016年)によれば、55~59 歳で転職ができた人がわずか12.3%でしかありません。他の世代から大きく差がついています。
もっとも50代になってしまうと、今更転職は面倒だという方がほとんどだと思います。苦労するのがわかっている転職活動をするくらいなら、このまま定年まで勤めあげようと誰しも考えるのもうなずけます。生身の身体であることから疲弊してくることは避けられません。やる気も減退してくるのは仕方がないものです。
ところが、そんな中でも、果敢に自分を生かす独立や起業を目指しておられる50代の方々は近年確実に増加してきています。いわゆる社内起業家と思えるようなサラリーマンの方も続々誕生しています。本当にすごいと思うだけでなく、日本社会にとって今まさに求められている人材ではないかと思います。
これらの素晴らしく頼もしい人材が増加している背景には、人生100年というコピーの影響だけでなく、その方自身の強い「思い」が背景にあると思います。
自身の人生を現役最後まで充実したものにしたい、常に情熱をもって打ち込めるものを持っていたいという強烈な「思い」や「信念」ではないかと思います。
そしてそれは、たった今からでも十分に可能なことです。今後を俯瞰できるようになった今こそが、その時なのです。
これまで培った知識や能力を十二分にご活用されて、ご自分が望む方向に是非進まれることを、微力ながらこれからも一生懸命に応援していければと思います。