先日、パナソニックが希望退職を募集開始しました。さらに昨年末から今年にかけて東京ディズニーリゾートなどを運営するオリエンタルランドが早期退職を募集していたことがわかりました。
近年では2019年にも大企業による早期・希望退職の募集が相次いだことがありました。この時は企業業績が良いにもかかわらず、将来に備えるため筋肉質な企業体質を目指すという目的で行われたのが記憶に新しいところです。このような不況時だけに留まらない人員削減の傾向は今後も繰り返されるものと思われます。
では、サラリーマン個人としてはどのように対処すべきなのでしょうか?
とは言え、誰もかれもが対処すべきであるということではありません。これは個人の生き方や職業人生の捉え方の問題なので、基本的に他人がとやかく言うことでもありません。
ただ、今後対処していかなければならないと考えておられる方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、どうすればより自分らしい充実した職業人生をその後も送ることができるのでしょうか?
今や60歳定年を迎えても、また定年延長を65歳、70歳までしてもまだまだ人生は続いていきます。ここで、定年後も働き続けるには自分には何が必要になるのか、ならないのかを、今一度考えてみても良いのではないでしょうか。
「まだまだ先のことだから考える気もしない」と思われる方もずいぶん多いと思います。仮に、何の準備もしないまま定年で退職すると、その後はどのような生活になっていくのかを考えてみることも必要です。いつか必ず定年退職はやってきます。
普通、サラリーマンの方が定年するとどういう過ごし方になるのでしょうか? 身近な先輩を思い浮かべてみられても良いでしょう。
基本的には、主に男性の場合ですが、社会との接触機会を失うことがあるようです。居場所がなくなるというものです。
例えば、男性の場合、多く見受けられるのが、図書館に毎日行く、喫茶店に行く、ショッピングセンターに行く、居心地の良い休憩所で本を読む、趣味に没頭する等々でしょうか。
それに対して、女性の場合は自分の時間として有効に活用しているようです。定年後には精力的に友人やグループで旅行に行くことも多く、また地域とのつながりもあるので自分の居場所を見つけることが男性よりも機会が多いようです。
日本の企業においては、これまで終身雇用という仕組みの中で、社員を長く企業内に抱えてきたという歴史があるものですが、片や定年年齢に達すると、一斉に横並びでリタイアにつなげていく制度のため、定年後では自分が希望する職種にタイミング良く仕事が見つからないという状況に遭遇します。
また従来は余命も現在ほど長く続くことも想定されなかったということもあると思います。今後は医療技術の進展により、人生100年と言われていますね。「自分はそれでいいのだ」、「定年後は、そんな毎日がずっと夢だったんだ」という方は正直大変ハッピーであると思います。
一方で、定年後も仕事を続けたいと考えられる場合、その時になって慌てないためには、在職中から自分で準備をしておく以外にはありません。特に、これまでサラリーマンとして積み重ねてきた永年の自身のキャリアの中で、社外に対してしっかりとアピールできる成果や実績を一度整理しておくということは極めて重要です。
今後の職業人生で何を「売り」としていくのかを認識しておくことはとても大切だからです。仮に良い話があったとしても、自分で認識できていないことには、他人にアピールすることはやはりできないものです。
50歳を迎えたタイミングで、定年後も現役で自分に合った仕事を行っていきたいという意思があるならば、この際、考えておく必要があります。一番良いのは考えておくだけではなく行動していくこと、さらに既に行動していることです。在職中から自分の会社だけに収入を依存せず、収入源を多様化しておければ理想的でしょう。日本の会社も今後は副業や兼業を認める会社が増えてくると思われます。
ではどんな準備をしていけば良いのでしょうか?
最初に必要なことは、やはりご自分の経験や知識などのたな卸しです。自分にどんな「強み」があるのかを自分で認識することが、定年後によりよい仕事を見つける上でも必要なことだからです。
そんなことから定年後を見据えて、自分の「強み」を発見するために経験知識のたな卸しやキャリアのたな卸しをされることを、私も著書「普通のサラリーマンでもできる!週末コンサルの教科書」(PHP研究所)の中でお勧めしているのですが、実際、長年サラリーマンをされてこられた方が、たな卸しのみで、自分の「強み」や「能力」がはっきりとわかるという方は、なかなかおられないということがじつは気にしているところでもあります。
理由は、自分では自分の「強み」や「能力」に気がつかないからです。知ってて当たり前となってしまい「強み」として認識できないこと、またそれが今後に活用できるという知見が無いということです。
ではどうすればいいのでしょうか?
自分では気がつかないのですから、周囲の「他人」から評価してもらうしかありません。その意味では、普段から本音でつきあえる友人、知人、人脈が大切になってきます。信頼のおける他人からの率直な意見やフィードバックを参考にしながら、自身の今後をいろいろとシミュレーションしてみられると良いと思います。
同時に、必要だと思うのが「学び直し」だと思います。企業の中では、基本的には数年ごとに異動があるものです。せっかく面白い仕事に携わっていても他部署で新たな仕事をすることになります。特に大手企業では異動が多いでしょう。
従って、過去に習得した知識やノウハウも、現時点でみれば既に陳腐化している可能性もあるでしょう。また、まったく別の興味関心のある分野について知りたい、学びたいと思われることもあると思います。
新たな興味関心が湧いてきたということはとても素晴らしいことです。「学ぶ」「考える」という行為は人間にしかできません。人生の辛苦をご経験してきた中で、新たに「学ぶ」ことで別の視点から人生を味わうことができるかもしれません。
その意味では、現在では「学び直し」ができる場が大変多くなっています。例えば、自治体主催の生涯学習講座や大学の公開講座、社会人大学院、民間一般講座等々、選択肢は多様にあります。一度、興味のある講座を検索されてみるのも良いことだと思います。
そして、定年後も働き続けるための最も重要なことは、「個人としての信頼」を獲得していく努力を行っていくことだと私は思います。もう会社という大きな看板はありません。定年後に周囲を納得させていくには「自身の信頼性」しかないのです。いい仕事ができて知見や見識もあるということです。そして、それが次の仕事を呼び込んでくるからです。